育毛剤、発毛剤の区別がよく分からないように、育毛サロン、発毛サロン、増毛サロンの定義もあいまいです。科学に基づいた診断や治療を行う病院とは違い、それぞれの業者が独自の育毛剤を販売したり、マッサージなどの施術を行っているからです。
しかし、まだ男性型脱毛症のメカニズムが不明で、これを診る皮膚科医も少なかった数年前まで、薄毛が気になる人はこうしたサロンを頼りがちでした。
その結果、抜けた頭髪が回復するどころか、頭皮まで傷めたり、不当に高い料金を払わされた人が数多くでてしまいました。消費者の生活相談を受けつけている「国民生活センター」にも、育毛や発毛効果を謳うサービス業者への苦情が多数寄せられています。
国民生活セッターが「育毛サービス」という調査項目を設けたのは2000年からで、この年には723件の相談が寄せられました。つづく2001年年度相談伴数は699件です。 続きを読む
前の項日で私は育毛剤と発毛剤と書き分けましたが、みなさんにはこの違いがお分かりでしょうか? 実は、私もよく分かりません。
この「育毛」「発毛」という言葉の使い分けは、ひじょうにあいまいなのです。日本で購人できる薬は「薬事法」によって定められていますが、まずそれを見てみましょう。
薬事法とは、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」の規制や運用についての法律です。市販の育毛剤、発毛剤には、このうち医薬品もあれば、医薬部外品もあります。 続きを読む
塗り薬のミノキシジル、飲み薬のフィナステリド。現況では、このふたつが男性型脱毛症の中心的な治療薬となっています。しかし、両方とも保険の適用はありませんので、薬局で購人するか、フィナステリドを病院で処方してもらう場合は自費診療になってしまいます。
現在、保険診療で処方可能な薬剤は円形脱毛症や男性型脱毛症、枇糖性脱毛症に適応がある塩化カルプロニウム液(商品名‥フロジン液)だけです。 続きを読む
近年、毛包を構成する細胞の培養技術や遺伝子解析手法の発達によって、毛周期や男性型脱毛症の発症メカニズムが明らかにされ、毛乳頭細胞が薬理作用のターゲットとして注目されています。これに伴って1900年以降に開発された有効成分はどう作用するのか、ヒトでの使用効果はどうなのかが公表されるようになってきました。
いまのところ、アメリカのFDAで脱毛改善効果が認められている外用薬(塗り薬)はミノキシジルだけですが、日本でもミノキシジル1パーセント溶液(商品名:リアップ)が市販されています。 続きを読む
「テレビでのCMで薄毛が『お医者さんで治せます』と言ってたので、その薬を使ってみたいんですけど」
阪大病院皮膚科・脱毛症外来では、初診のときにいきなりこう言う方も少なくありません。テレビで薄毛を解消する薬のCMがいくつか放送されていますが、来院する方が言うのは、爆笑問題が出演している万有製薬のものです。CMでは名称がでてきませんが、これが商品名:プロペシア、つまりフィナステリドのことです。
実際、爆笑問題のCMシリーズは強烈なインパクトがあったようで、その放送を境に脱毛症外来はにわかに患者さんが増えました。これは全国的な現象だと思います。
もっとも、プロペシアの宣伝に爆笑問題が起用されたのは、2005年12月の発売から一年ほど経ってからでした。私が聞いた話では、発売に当たって厚生労働省から「あまり派手に宣伝しないよう」との指導があったそうで、最初は控えめに宣伝したところ、初年度の売り上げが予測したより下回ってしまった。そこで爆笑問題の登場となった、と言われています。
ともあれ、テレビCMが直接受診のきっかけになった人が大半のようです。「テレビで宣伝してる脱毛治療薬って、どういう薬なんですか? 私ぐらいの症状だと、あの薬による治療が必要ですか?」
このように、私たち医者に意見を求めてこられる方も大勢います。しかし、これはかなり難問です。薬のメカニズムや効き目に関する説明ならいくらでもでわないかを決めるのは本人次第ですから。 続きを読む
さて、では私のフィナステリド体験を公開しましょう。フィナステリドは、その人の症状にかかわらず、一日一錠の服用と決められていますから、私も当然それに従いました。
主に頭頂部に症状がでていた私には、効果が表れてもなかなか自分では分かりませんでしたが、半年以上経った頃から周囲の人たちに「効果あったやないか」と言われるようになりました。
写真を見て「なんや、効くと言ってもこの程度か」と思われた方もいるかもしれません。それでも、即効性がないことに懸念を抱く患者さんへの説得材料にはなっていますし、実際には私より明らかに効果が表れた方もたくさんおられます。
ところで、フィナステリドを試そうと考えた裏には「学会や講演会で受けたい」という不純な動機もありました。ありがたいことに、予想以上に受けています。とくにドクターを相手に行う講演では、長い話で会場内がだれてきた頃、ひゅっと自分の写真を出すと効果てきめん。みなさん突然覚醒して大いに笑ってくれるのです。
2005年の暮れに日本でフィナステリドが認可されたとき、すぐにこれを使い始めたのは医者や製薬会社のMR(医療情報担当者)さんたちでした。この薬はまず、医療業界内で大きな反響を呼んだのです。私の勤務先である阪大病院でも、さまざまな科目の先生たちがフィナステリドを飲んでいます。
実は、かく言う私自身も、フィナステリド服用者です。この薬が発売された頃、50代に入っていた私は、頭頂部が少々寂しくなっていました。先ほど説明したようにフィナステリドの治験は24歳から50歳の成人男性が対象でしたので、50歳を超えた者には効果がどう表れるのか、自分で試してみようと思ったわけです。 続きを読む
フィナステリドは男性型脱毛症の治療薬なので、服用者が大人の男性に限られるのは当たり前、と思われたかもしれません。しかし、男性型脱毛症を発症するのは、男性だけではないのです。女性が男性型脱毛症にかかるメカニズムは後でで改めて説明しますが、ここでは治療に関してつぎの点だけ覚えておいてください。
フィナステリドは、女性の脱毛症治療には使われていません。とりわけ妊娠中の女性や妊娠しているかもしれない女性、乳児に母乳を与えている女性にフィナステリドを処方することはタブーとなっています。
成人男性のフィナステジド服用に関しては、て1ミリグラム錠をつづけて飲んでいると、前立腺がほんのわずか小さくなることが確認されました。これによって前立腺の磯能に間題が起きることはありませんが、前立腺がんの腫瘍マーカー検査をした場合、値が正常値の半分程度になってしまいます。したがって、前立腺がんの腫瘍マーカー検査を受ける際は、フィナステリドを服用中であることをあらかじめ医師に伝える必要があります。 続きを読む
どんな薬にも、多かれ少なかれ副作用はつきものです。フィナステリドの場合、臨床試験における副作用はごく軽いものでした。薬を飲んだことと関連がありそうな副作用は、フィナステリド0.2ミリグラム錠を投与されたグループで1.5パーセント、て1ミリグ
ラム錠のグループでは6.5パーセント、プラセボを投与されたグループでは2・2パーセントの患者さんから訴えがありました。
どちらのグループも、訴えは男性機能の低下や性欲の減退など「性」に関するものが大半でしたが、いずれも「自覚症状」で、日常生活に大きな障害をきたすものではありませんでした。そもそもフィナステリドには性欲に関与するテストステロンを減らす作用はないので、理論的にも男性機能に支障をきたすことはないと言えるでしょう。
欧米の臨床試験でも、性機能に関連した副作用の訴えが四~五パーセント報告されていますが、これも自覚症状であり、1ミリグラム錠グループとプラセボグループとのあいだにも決定的な差はなかったと報告されています。 続きを読む
では、我が国におけるフィナステリドの臨床試験結果をお知らせしましょう。日本では24歳から50歳で、軽度あるいは中程度の男性型脱毛症の方々を被験者として、頭頂部写真評価が行われました。「著明改善」「中等度改善」「軽度改善」「不変」「軽度進行」「中等度進行」「著明進行」の七段階で評価したのです。
フィナステリド0.2ミリグラムの錠剤を一日一錠、一年間つづけて飲んだグループでは54%、1ミリグラム錠剤での同じ試験では58%の方に「改善」が認められました。服用後一年を経ても改善効果は見られず、「不変」だった人の割合は40%、脱け毛が「進行」した人は2%でした。 続きを読む