-11月-2011の記事

飲む発毛薬・フイナステリド

さて、ここからは男性型脱毛症のいちばん新しい治療薬、フィナステリドについてご説明します。この薬の出現で、男性型脱毛症の治療戦略は格段に進歩しました。

前章で説明したように、男性型脱毛症は、男性ホルモンのテストステロンが細胞内でⅡ型の5aIリダクターゼという酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)に変わり、これが毛乳頭細胞内で作用して起こります。

フィナステリドは、Ⅱ型の5a-ジダクターゼの作用を妨げる薬です。アメリカで1983年に合成され、前立腺肥大の治療薬として一九九二年にアメリカのFDA(食品医薬品局)に認可されました(商品名‥プロスカー)。前立腺肥大にも、ジヒドロテストズテロ
ンが関係しているのです。 続きを読む


男性型脱毛症の臨界点

脱毛は皮膚科で診る病気ではありますが、少し前まで「抜け毛対策」と言うと、まず市販の育毛剤、発毛剤を試す方が多かったと思います。

男性型脱毛症に関しては、従来「遺伝令人種的な差による毛髪の生理的変化」、言い替えれば「皮膚の個性」というとらえ方だったため、医師側もあまり積極的に男性型脱毛症を治療してこなかったのです。

この状況を大きく変えたのが、2005年12月に新しく登場した男性型脱毛症治療薬フィナステリド(商品名:プロヘシア)でした。この薬を使うためには、医師の処方箋が必要です。そんな事情に後押しされる形で、私たち皮膚科の医師も、ようやく男性型脱毛症に悩む方々と診療室で接する機会が増えてきました。

正確に言えば、男性型脱毛症は「病気」とは言えませんが、特有の病態であるため医学的に診断を下さなければなりません。

では、どの程度髪が抜ければ男性型脱毛症と診断されるのか。男性型脱毛症は、髪が抜ける部位が前頭部と頭頂部に限られているのが大きな特徴です。

半世紀以上前、この発症に男性ホルモンと遺伝がかかわっていることをつきとめたJ・B・ハミルトンは、前頭部と頭頂部における脱毛の進行度をIからⅦの七段階に分類し、診断の指針としました。 続きを読む


男性ホルモンのパラドックス

毛の発育に対する男性ホルモンの作用というのは、髭であれ、前頭部であれ、毛乳頭細胞がターゲットになっています。ところが、男性型脱毛症を起こす人の場合、男性ホルモンが髭では毛の発育を促進するシグナルをだし、前頭部では発育を抑制するシグナルをだすわけです。これはどういうメカニズムなのか。生体内で起こるこの相反する反応を、試験管のなかで再現してみました。

試験管のなかで毛乳頭細胞と角化細胞という2種類の細胞を「共培養」し、そこに男性ホルモンを入れたときに毛乳頭細胞と角化細胞がどうなるかを調べたのです。まず、髭の毛乳頭細胞を使った実験では、男性ホルモンを加えることによって、角化細胞の増殖が促進されました。つまり、男性ホルモンによって髭が濃くなる、という現象が試験管のなかで再現されたわけです。 続きを読む


髪と男性ホルモンの深いかかわり

男女を問わず、思春期になると男性ホルモンの作用でヘアサイクルが変化してきます。と言っても、全身の毛がすべてヘアサイクルを変えるわけではありません。男性ホルモンが働く箇所は、あらかじめ限定されているのです。

男性の湯合、子供の頃は髭や胸毛は軟毛なのでほとんど目立ちませんが、思春期になると髭も胸毛も硬毛化してきます。これが男性ホルモンの働きです。

男性ホルモンは女性ももっていますが、女性の場合、思春期を過ぎても顔や胸部分の毛は軟毛のまま。ただし、腋毛や陰毛は男女を問わず思春期の頃から男性ホルモンの作用で硬毛になってきます。

男性ホルモンだけでなく、甲状腺ホルモンやビタミンD、グルココルチコイドなど、ステロイドレセプターファミリーの多くも、私たちのヘアサイクルに影響を及ぼします。ただし、男性ホルモン以外は主に毛包の上皮細胞に作用するのに、男性ホルモンは間葉系細胞にのみ直接影響を与えることが分かりました。 続きを読む


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